演劇ユニット『SP@CE』

奈良で活動する演劇ユニット『SP@CE』の劇団員ブログ用ページです。 現在、劇団員(役者、裏方)募集中です!

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○○の夏

みなさん、おはこんばんちは。谷口です。
お久しぶり…と言うに言えないほど期間が空いてしまってました(´・_・`)スイマセン

さて、7月に「ナツマチ」公演をさせていただきまして。
今回、私はアヤメとアザミの1人二役ということで…

自分史上最も悩み、苦労し、でもどこか「やってやるぞ!」という気持ちを持ちながら作り上げたキャラでした。
観ていただいた方からは、概ね好評な感想をいただきましてホッとする反面
自分の技量の未熟さや反省点も多々見つかり、ステップアップするために頑張ろうという気持ちも湧きました。

本当にありがとうございます!

これからもあたたかく見守っていただければ幸いです(*^_^*)


……と公演後すぐ言えず、夏も終わり、何故今言うハメになってしまったのか?




そこでタイトルの「○○の夏」なわけです。
それはずばり!

「谷口の夏、病院の夏」

あれ?なんか聞いたことあるフレーズ(笑)
しかしなんかネガティブな響きだな(笑)



実は公演後、しばらく経ったある日のこと。
40度の熱が出まして入院しておりました(笑)
原因は不明でしたが、1週間ほどで熱も下がり退院することが出来ました。

しかし!

退院して3日後。今度は謎のじんましんが腕や足に出現したのです(´・_・`)
退院したばかりっていうのと、次の日には東京に観劇のため遠征するというのもあったので再度病院へ。
でも原因は不明(2回目)
まぁこれも遠征中に治ってきたのでひとまず安心してました。

ところが!!

遠征から帰ってきて数日後、今度は胃腸炎にかかり…
最初の1週間は市販の薬を飲んでたのですが、どうにも治らないのでまたもや病院へ。
ここまで来ればもうお分かりですよね。
胃腸炎になった原因は不明(3回目)
治るまでに3週間かかりました(T_T)


…とこんな感じで今年の夏は病気三昧でした!(嬉しくない)


お祓い行こうかと思いましたよ。







結局行ってませんが(;´Д`)



まぁ自分の体の状態を知るいい機会でした!
今はこの夏の出来事がなかったかのようにピンピンしております(笑)



ホント何だったんでしょうね?(^_^;)


ではでは~ヽ(・∀・)ノ














あ!演劇あんまり関係なくてごめんなさいm(_ _)m
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「ナツマチ」 another story『meaning of my name』。

case of sora tachibana

『meaning of my name』


*************


雲。

太陽。

鳥。

電線。

洗濯物。

鳥。

紙飛行機…ん?

鳥…2回言ったか?

まぁいいや。鳥可愛いしな。雀とか、燕とかは勿論、鷹や鷲だってよく見ると可愛いんだからな、侮りがたしだ、鳥。

犬や猫やアライグマに比べるとちょっと劣るが、それでもまぁ悪くない。…ペンギンに至っては、限りなくアライグマクラスと言ってしまって差し障りない。

個人的な…飽くまで個人的な好みで言わせてもらえるなら、ダチョウはかなり可愛いと思う。速いし。

そもそもダチョウは……はっ!

しまった。真面目に考え事をしていた筈なのに、気付けば鳥のことばかりを考えていた。

そう。真面目に真面目に。

雲。

太陽。

鳥。

電線。

洗濯物。

紙飛行機。

アヤ。

…アヤ?

「何やってんの、ソラ?」

アヤだ。空にあるものを考えてたらアヤが出てきたぞ。

「アヤは…飛べるのか?」

「はい?」

あ、違った。寝っ転がってるところを、アヤが覗きこんできただけだ。アヤは飛ばない。

「ごめんな。勘違いだった。アヤは飛ばないものな」

「ん?う、うん。そうだね」

起き上がって、アヤの隣に並ぶ。うん、やっぱり飛んでない。

「で?何やってたの?」

「空を見ていた」

「ソラを?…ああ、空か」

二人して空を見上げる。電線や洗濯物はさっきより近くなった。紙飛行機はもう見えないけど、さっきまでは飛んでたんだ。太陽とか、雲とか、鳥とかと同じように…空に。

「何か考え事?」

またじっと空を見上げていると、アヤがそう尋ねてきた。

「うん、考え事…名前のこと」

「名前?」

「そう。名前。名前の由来」

そうなんだ。空を見上げて考えてた…名前の由来。立花ソラ。ソラ…ソラ…空。

「由来…か。なるほど、あんまり考えたことなかったな」

「そうなのか?じゃあ、アヤは自分の名前の由来、知らないのか?」

「ん~…知らないけど、多分、花の名前から取ったんじゃないかな?アヤメだから、菖蒲」

「そっか」

アヤはアヤメだから、菖蒲か。そう言えば、アザミも薊だもんな。周防家は花の名前を付けるのか。

「アヤメな…殺めるから取ったわけじゃないのか…」

「そんな親いないでしょ。子供に何て名前付けてんだよ。辛うじて忍くらいだよ、子供にそんな名前付けるの」

いや、忍も多分付けない。

「冗談だって。怒るなよ、アヤ」

「怒ってはないけど」

「でも、そっか。花の名前な。菖蒲ってどんなだっけ?」

「…綺麗な花だよ。アイリスって呼ばれたりもする。花言葉は、吉報や、希望、情熱…あんまり似合わないかな」

アヤはそう言うと、ははっと笑って、眉をハの字にした。アヤがこういう顔をする時は自分を卑下してる時だ。

「そんなことない。アヤにぴったりだ」

だから、はっきりと言ってやる。アヤはこれくらいはっきり言ってやらないとダメなんだ。すぐに自分のことをバカにする悪い癖がある。

「ソラ…ありがと。…ソラの名前の由来…何なんだろうね?ソウ先生には聞いてみた?」

「ううん。ソウ兄ちゃん知ってるかな?」

「知ってるんじゃない?案外、ソウ先生が付けた名前だったりして」

「そうかな?それじゃあ、今から聞きに行ってくる。ありがとな、アヤ」

「どういたしまして」背中にアヤの声を聞きながら、診察室に向かった。

ガチャ。

診察室のドアを開ける。しかし、残念ながらそこにソウ兄ちゃんの姿はなかった。

あれ?まだ寝てるのかな?部屋に行ってみようかな?と、診察室から出ようとしたところでリュウと鉢合わせた。

「おう、ソラ。どうした?何か急いでるみたいだけど」

急いでるように見える人間に呑気に話しかける辺りがリュウらしい。リュウイズムと言っていいだろう。

「………」

「ん?どうした?俺の顔が何か突いてるか?」

それを言うなら、「俺の顔に何か付いてるか?」だろ。ボケなのか、単なる覚え間違いなのか、微妙なところだ。何せリュウだしな。

う~ん…どうしよう?リュウにも聞いてみようかな?名前の由来。…ついでだし聞いてみるか。

「なぁリュウ。リュウはリュウタだろ?自分の名前の由来とか知ってるか?」

「由来?」

「何だ、由来も知らないのか?由来っていうのはな――」

「いやいや、それくらい知ってっから」

何だ知ってたのか。リュウなら知らない可能性もあるかも、と思ったけど、どうやらそれくらいの知識はあるらしい。

「由来な~。何だろ?多分、じいちゃん先生だよな、俺の名前付けたの。全然気にしたことなかったわ」

「はぁ…これだからリュウは」

「な、何だよ。それじゃあ、お前は知ってんのか?ソラって名前の由来」

「それが分からないから、ソウ兄ちゃんを探してたんだろ」

そうだ。こんなところでリュウなんかに拘ってる場合じゃない。ソウ兄ちゃんを探さなきゃ。

「しっかし、名前の由来か~。俺の場合、リュウタだろ?リュウタ…リュウタ…やっぱり、リュウってことは、竜かな?ドラゴンのように猛々しく育って欲しい、みたいな?」

リュウは調子に乗って、「がぉーっ」みたいなことを言っている。…リュウがドラゴン?…はぁ。それはないな。

「な、何だよ?何で、そんな可哀想な子を見る目で俺のこと見てんだ?」

もし本当にリュウの名前の由来が、ドラゴンの竜なんだとしたら…じいちゃん先生が不憫すぎる。名前負けも甚だしいな。

「…じいちゃん先生に…宜しく伝えて下さい」

ペコッと、会釈とお辞儀の中間くらいの感じで頭を下げる。後方からは何かを訴えかけるような声が聞こえてくるが、気にせずソウ兄ちゃんの部屋へ向かった。

コンコン。

「はぁい」

ドアをノックすると間延びした声が返ってきた。起きてはいるが、まだ眠いのかもしれない。ドアを開けて中に入ると…あれ?ソウ兄ちゃんはお仕事中だった。

「ソウ兄ちゃん、お仕事中か?」

「ん~…あぁ、まぁ、ちょっとな」

いつものよく分からん紙に、よく分からん文字を書いている。たまに、でたらめに書いてるんじゃないかと、思わないでもない。

「今、お話しても大丈夫か?」

「ん?あぁ、大丈夫だ。そんなに急ぎの仕事でもないからな」

そう言うとペンを置き「どうした?」とこっちに向き直ってくれた。

「名前の由来が気になって」

「名前の由来?ソラのか?」

ぶんぶんと首を縦に振ると、「名前の由来な~」と言って、少し考え込んでしまった。この感じからすると、ソウ兄ちゃんが付けたわけじゃなさそうだ。ちょっと残念。

「…ああ、そうだ。思い出した」

「本当か?」

「うん。確か、ソラとユキは母さんが付けたんだよ。ほら、母さんは天体観測が趣味だったろ?だから、空とか、大気とか、宇宙とか、そういう関係の名前が付けたかったんだって聞いたことがある」

「そうなのか…」

「で、ユキは確か、生まれた時に驚くほど肌の色が白かったから、ユキって名前だったんじゃないかな?」

なるほど。確かにユキ姉ちゃんは、ユキっぽさがかなりある。

「ソラは~…そうそう」

と、ソウ兄ちゃんはちょっと笑った。…ん?何で笑う?

「お前には色んな名前の候補があったんだよ。最初は確か…アメだった」

「雨?」

「そう。ユキに対してのアメ。でもな、『お前の名前はアメだ』って親父が抱っこした瞬間、お前が凄まじい勢いで泣き出したんだってさ」

…うん。何か分かる気がする。アメ…悪い名前じゃないけど…何か違う気がする。

「その他にも、太陽からサン、風からフウ、星からヒカリ…色んな名前を付けようとしたらしいんだけど、その度にお前が大泣きするもんだから、相当困ったらしいぞ」

うん、ヒカリとフウはまだしも、太陽からサンはちょっとどうかと思うな。いっそ、雷からライとか。…何だ、ちょっとカッコいいじゃないか。

「女の子につける名前じゃないな」

「心を読まれた気がする!」

「まぁそんな中で付いた名前がソラだったわけだ」

「ソラの時は泣かなかったのか?」

「らしいぞ。色々迷って、最後の候補だった、ソラって名前で呼んだら、お前は嬉しそうに笑ったんだってさ」

ソウ兄ちゃんが遠い目をして言う。

「まるで空で輝くお日様みたいな笑顔だった。母さんも親父も…ユキも俺も。そんなお前の笑顔が大好きなんだよ」

そう言って優しく笑うと、頭をぽんぽんとしてくれた。

そうか…それで『ソラ』なんだ。

「ソウ兄ちゃんは?」

「ん?」

「ソウ兄ちゃんの名前の由来」

ソウ兄ちゃんは、一瞬驚いた顔をして、少し悲しい顔をした。…聞いちゃいけなかったのかな?「やっぱりいいや」そう言う前にソウ兄ちゃんが口を開いた。

「俺は…名前負けだよ、完全に。本当は…『ソウスケ』なんて名前…俺には名乗る資格なんてないんだ」

資格がない?名前負け?一体…

「俺の名前の由来はな――」


**


デネブ。

アルタイル。

ベガ。

三つの星を線で繋いで出来た大きな三角形…夏の大三角。

夏にしか見れない不思議三角。

今、一人で見上げている。

夏に『雪』は降らない。

『総』てのことから『助』けてくれる人はもういない。

ただ…『空』があるだけ。

………。

でも、顔を上げなきゃ。前を向かなきゃ。笑っていなきゃ。

その笑顔を愛してくれた人達の為にも。

そう言い聞かせ、一歩…前へと足を踏み出した。

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「ナツマチ」 another story『my dear』。

case of yuki tachibana

『my dear』


*************


「アヤ、そこのお醤油取って。リュウ、それは砂糖じゃなくてお塩よ」

…う~ん。

「アヤ、ゾウとキリンどっちが好き?リュウ、それはタヌキじゃなくてオオカミよ」

……う~~ん。

「アヤ、今日の晩御飯なに食べたい?リュウ、それはお箸じゃなくてお橋よ」

………。

ダメですね。やっぱり全然しっくりこないです。言葉を崩して喋るのがこんなに落ち着かないものだなんて…。

ソラや兄さんが相手なら平気なのに…何ででしょう?

アヤやリュウにさえ言葉を崩せないのに、他の人になんて…そんなの一生出来る気がしません。

「はぁ…」

思わずため息が出ます。

自分の不器用さにもですが、可愛いげのなさに…。

ソラのように屈託なく、ソラのように無邪気に、ソラのように素直に…周りと接することが出来たら…甘えることが出来たら…そう思わずにはいられません。

あ、ソラというのは私の妹のことです。可愛い妹です。

目の中に入れても痛くない、可愛い可愛い妹です。

兄さんには勿論、私にもとても懐いてくれています。

私もあんな風に…。

可愛い妹にコンプレックスを感じているなんで、我ながら情けない限りです。

兄さんにこんな相談をしても「お前はお前のままでいい。俺はソラもユキも同じくらい大切に思ってる」とか言うんでしょうね。

兄さんは多分、本当に私とソラを区別したりはしていないと思いますから。

妹の私が言うのも何ですが…兄さんにはちょっとシスコンの気がありまして…。本当に私のこともソラと同じように可愛がってくれていると思うんです。

だからこそ、申し訳なくて…。

なんて考えてると、いつまで経っても終わらない。いつまで経っても堂々巡り。

そもそもこんなことを考えているのが良くないんですよね。…分かってはいるんです。でもどうにもならない。心配性は兄さん譲り。今更どうにもなりません。

「はぁ…」

もう一度、少し深めのため息をつくと、目の前から何やら楽しげな女の子が歩いてきます。ソラです。

頭を左右に揺らしながら、何かをぶつぶつと呟いてるようです。何でしょう?

「ソラ、どうしたの?」

「でねばるたいるべら」

…ん?

「ソ、ソラ?」

「でねばゆたいゆべやー」

…な、何でしょう?最愛の妹の口から謎の言葉が…。

「でればすたいむれあー」

こ、怖い。妹の口から妙な呪文が吐き出される様というのは、非現実的な恐怖を感じます。

「ですばすたおるふぇあー」

以前、兄さんに無理矢理見させられた古いホラー映画を思い出します。ソラが「REDRUM」とか言い出したら…あれ?何か最初と言葉が変わってるような…。

「ではあるばいとさまー」

あ、違う。全然違う言葉に変わってますね。

「ソ、ソラ?何?何の呪文なの?」

「でぃーどりっひばすがすばくはつぷれじでん…あれ?ユキ姉ちゃん?どうしたんだ?」

「ごめんね、ソラ。それは100%お姉ちゃんの台詞なの」

あと、途中はどうだか分からないけど、最後のは絶対にわざと間違えてるよね?お姉ちゃん騙されないから。

「でればるたいるべらん、なんだ」

ん?ちょっと最初のっぽくなった気がしますね。もうよく分かりませんけど。じゃあやっぱり途中のもわざと?この子がどこまで本気なのか、姉である私でも把握しきれないです。誰に似たんでしょう…。

「その…で、で、でれ?でね?何とかって言うのは何?」

「ダメだな、ユキ姉ちゃん。でげばるたいずべら、だって」

うん、違う。この子もちゃんと言えてないし、多分、最初の言葉をもう覚えてない。

「その、何とかって言うのは何?呪文なの?新しい遊び?」

「違う違う。これは…あの~…あれだ。その~…」

まさか、自分が何について呟いていたのかも忘れてしまった…のでしょうか?本格的に心配になってきました。

「えっと~…な、な、な~…何ちゃって大錯覚?」

ん?何?もう全然意味が分かりません。

「あ、違う。あれだ、夏の――」

「夏の?」

「…なーーーーっ!!」

突然奇声を発してソラが私から猛烈に距離を取ります。…何でしょう?これくらいの行動なら、とてもソラらしくて今更驚きもしませんが。

「あ、危ない…危うくアレするとこだった。…巧みだな。ユキ姉ちゃんは巧み過ぎるな」

ソラが口の端を上げて、にやりと笑いながら「お前もなかなかやるじゃないか」みたいな顔をしています。

「アレか?誘導尋問なのか?」

「ううん、違う。こういうのを誘導尋問とは言わないのよ」

「そっか」

物分かりが良いのがこの子の長所です。

「詳しくはご説明できないのだが…とにかく、でねばるた…た…何だっけな?またソウ兄ちゃんにちゃんと聞いとかなきゃ」

ソウ兄ちゃん?今、確かにソウ兄ちゃんって言いましたよね?つまり、このソラの奇行の原因は兄さんにあると。

「まぁつまり、そういうアレなんだ」

何がつまりなのかも、そういうアレなのかも、全く分からないのですが…。

「つまり、兄さんに何か聞いたっていうこと?その~…何とかっていうのを」

「………」

「ソラ?」

「忍の一字は衆妙の門だ」

「え?」

「ユキ姉ちゃん…忍の一字は衆妙の門…忍の一字は衆妙の門なんだー!!」

そんなことを叫びながら、ソラは何処かへ走って行ってしまいました。…そして、取り残される私。

何だったんでしょう?『忍の一字は衆妙の門』?つまり、何かを我慢することが大事ということ?知ろうとせず我慢しろ、と?

…しかし、あの子はたまに妙な言葉を知ってますね。

まぁ、発信源が分かっているので、これ以上ソラに聞く必要もないですが。

「やれやれ」

そう一人言ちると、診察室の扉を開け、中に入り、もう一人の親愛なる人に声をかけます。

「兄さん。またソラに変なこと教えた?」


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「ナツマチ」 another story 『the day when snow stopped』。

case of A.suou

『the day when snow stopped』


*************


舗装もろくにされていないような砂利道を軍用ジープで走る。

クッションが悪いのだろう。お世辞にも乗り心地が良いとは言えないが、そんなことにケチを付けるような余裕は、今の軍にはない。

そして、今の私にも…。

空はどんよりと曇っていて今にも雨が降り出しそうだ。

『まるで今の私の心を映し出したようだ』なんて、詩的なことも『アヤ』なら言えたのかもしれない。

曇天を一瞥し、極めて小さな音で舌打ちをすると、ジープを運転している早川伍長がミラー越しにこちらを見て…

「どうかなさいましたか、少佐?」

と、少し緊張した面持ちで訊ねる。

外の景色に目を落としながら、「気にするな」と一言だけ吐き捨てるように呟くと、それ以上追求してくることはなかった。

この辺りの匙加減は慣れたものだ。私の機嫌を損ねない線引きをしっかり理解している。伊達に長年、私の部下をやっているわけではないということか。

しかし、まぁ「雨が降りそうだから機嫌が悪いんだよ」なんて理不尽なことを部下に言うわけにもいかないだろう。

いつからだ?こんなに雨が嫌いになったのは。

…私にもあったんだ…雨降りも悪くないと、そう思っていた頃が。





ぼんやりと窓の外を眺めている。

雨だなぁ…。何だろう?何とも言えず憂鬱な気分になる。

「どうしたんです、アヤ?」

誰かが『アヤ』の名前を呼び、顔を覗き込む。

誰かなんて分かってる。私に…アタシに対して、こんな丁寧な言葉で話しかけるのは彼女しかいない。

「ん~…雨だなぁって思って」

そう言うと、彼女はきょとんとした顔でこちらを見る。

うん。ユキのこういう表情は好きだな。彼女の名前の通り、無垢な新雪のようだ。

「アヤは雨が嫌いですか?」

「ん~…嫌いってわけじゃないけど…何だろうね?何か~…どよんとするよね」

そう言うと、ユキは一拍おいて、くすくすと笑った。何だろう?そんなにおかしなこと言ったかな?

「『どよん』ですか?アヤらしい表現ですね。何となく」

むっ。ユキの中のアタシのイメージってそんなか?『どよん』が、『らしい』って、何かリュウみたいで嫌だな。

「ユキは好きなの?雨」

何かユキ『らしさ』を引っ張り出してやろうと思い、話をふってみる。

「そう…ですね。嫌いじゃないですよ。お洗濯が乾かないのは、ちょっと困りますけど」

何だ。ユキらしいけど、『どよん』とは随分違うな。笑う要素がない。

「でも…そうですね。雨が降ると、ソラがつまらなそうにしてるので、それもちょっと可哀想かなって思います」

「あ~…確かに。外で遊べないもんな。ソラは雨嫌いそうだ」

ソラは快活で元気いっぱい。ユキは大人しくて理知的。…顔はそっくりでも中身は全然違う。

「ユキとソラってさ、見た目はそっくりだけど、中身は全然違うよね?」

「…そうですね。私にも…ソラみたいに可愛いげがあれば良かったんですが」

ん?そういうつもりじゃなかったんだけど…そもそもユキだって十分に可愛いげあるじゃないか。

「いや、ユキだって――」

「しゃべり方とか」

「えっ?」

「しゃべり方とか…変えてみたら良いんでしょうか?ほら。しゃべり方が違うだけでも、随分と印象が変わると思うんです。どうでしょう?」

…どうでしょう?って…思わず少し吹き出してしまう。

「え?え?何です?何で笑うんですか?」

「いやいや、だってさ…」

そんなことで悩んでるなんて、やっぱり十分に可愛いげがあるじゃないか。

「あっ」

そんな言葉を口にする前に、ユキがアタシの後方を見て、小さく声をあげた。

「ん?」

振り返ると、さっきまで覗いていた窓の外に、うっすらと虹がかかっているのが見えた。

「ほら、ね?」

ユキが呟くように話しかける。

「雨の後には虹がかかるんですよ?雨も悪くないでしょう?」


**


…くそ!くそっ!くそっ!!

あの七光りのボンクラ息子め…!

普段はろくに仕事もしないくせに、こんな時だけ余計なことをしやがる!

上官でさえなければ、あの何の役にも立たない頭を、いますぐぶっ飛ばしてやるのに…!

苛々しながら、私は「underground統括支部」の入口前までやってくる。

全身を激しく雨が打ち付けているがそんなことを気にしている場合ではない。

しかし、雨で濡れたせいか、こんな時に限って、指紋認証の読み込みが悪い。更に苛立ちが増していく。

ピッ。

安っぽい機械音が鳴った直後、開きかけた扉に手をかけ、無理矢理にこじ開けると、そこに見慣れた顔があった。早川伍長だ。軍靴を鳴らし敬礼をする彼の儀礼的な挨拶を無視する。

「早川!どういうことだ?説明しろ!」

「す、すいません、少佐。管轄外なのでお引き取り願ったのですが、私の言うことでは…聞いていただけず――」

「権限はこっちにある。こういう時の為に貴様を常駐させてるんだろう。相手が賊でも同じように頭を垂れるのか、お前は?」

彼の胸ぐらを掴み、噛み付くように吐き捨てる。

「も、申し、訳――」

突き飛ばすような強さで掴んでいた手を離す。

…分かってる。伍長を責めるのは酷だ。いくら管轄の違いがあっても、相手は中佐だ。止められるわけがない。…しかし…!

「作戦本部」と記されたドアの前で足を止め、襟元を正しノックをする。

「周防です。失礼します」

ドアを開け、中に入ると、そこにいた男の顔が目に入る。瞬間、眉間に皺が寄るのが分かった。

自分ではポーカーフェイスを自負しているのだが…こうも顔に出るとは…。

「おぉ、周防少佐か。どうした?そんなずぶ濡れで」

…どうした?だと?とぼけやがって…!

奥歯がガチリと噛み合う音が鳴る。今にも掴みかかりそうな気持ちを抑え、奴に…遠藤中佐に用件を伝える。

「…いえ。遠藤中佐が支部に来られ、『立花ユキ』の処分に着手されると、部下から連絡を受けまして」

「それでこの大雨の中、わざわざ戻ってきたのか?律儀なものだな、君も。流石、女だてらに少佐を名乗ってるだけはある。軍人の鑑だ」

と手にしていたワインを飲むと、酒臭い息を吐き、下品な笑いを垂れ流した。…奴の一挙手一投足に苛々する。

「会議の場でも『立花ユキ』の有用性に関してはご説明した筈ですが?今は『立花ソウスケ』の引き抜きのためにも、『立花ユキ』の処分はするべきではない、と。今の軍には――」

喋っている私の声を遮るように、ぽんっと、肩に手が置かれる。

「周防少佐。『アナグラ』の連中に入れ込むのは、あまり賢いやり方ではないな。出世の邪魔になるぞ」

「私は――」

遠藤が、バサッと紙束を机の上に広げる。何かの書類か?一瞬、何のことか理解が出来なかった。…いや、したく…なかったのか…。

「いくら『軍人の鑑』たる君でも、いくらかの情が移るのは仕方ないことだ。…まぁ気にするな。礼はいらんよ。恩に着せるつもりもない。…これからの『君』に期待している」

そう呟くと、遠藤中佐はそのまま部屋から出ていった。

私は震える手で、机に広げられた紙束を集める。そこに記された文字…。

『死亡確認書 氏名 立花ユ…』

目の奥に火が付いたように視界が真っ赤に染まる。激しい雨音がノイズのように耳を衝く。左手に紙束を握りしめる。空いた右手を血が滲むほど強く握り、気づけば私は思い切り壁をなぐりつけ――


**


ガタンっ!

ジープが激しく揺れる。

…そうか。眠ってたのか。

「すいません、大丈夫ですか?少佐」

「あぁ…」

短く返事を返す。

懐かしい夢を見た。私が雨を好きになった時と…雨を大嫌いになった時の夢だ。

窓から外の景色に目をやる。いつの間にか、外は大雨だった。…あの日のように。あの日…ユキがいなくなった日のように…。

「…そうか」

「はい?」

一人呟く私の声に、早川伍長がすっとんきょうな合いの手を挟む。「いや」と返事を返し、私は一人言ちる。…そうか。私が雨を嫌いなのは…そういうことだったんだ。

「…雨は雪を溶かしてしまうからな」

私の声が聞こえたのか、聞こえなかったのか、伍長がその言葉に返事を返すことはなかった。

「少佐。もうすぐA地区の貸倉庫前に着きます。ご準備を」

「あぁ」

ジープのドアを閉め、貸倉庫の扉の前に立つ。

中からは、二人の男が話す声がする。慣れ親しんだ『家族』の声だ。

私はそんな感傷を頭の中から追いやり、スイッチを切り替える。

『家族』ではない、『親愛なるものの仇』へと。


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「ナツマチ」 another story 『she never can get up』。

case of ryuta mishima

『she never can get up』


**************


コンコン。

いつものようにドアをノックするが、勿論返事はない。

コンコンコンコン。

さっきより強めにノックする。
…勿論返事はない。

「おい、アヤ!起きろよ!」

……。

「起きろって!話があんだよ!おい、アヤ!」

………。

起きないよな。そうだよな。分かってるよ、分かってる。

…仕方ない。

俺は手に持っていたCDデッキをドアの前に置き、再生ボタンを押すと、その場を離れた。

アヤの部屋から戻った俺は、冷蔵庫からキンキンに冷えた缶ビールを取り出し、軽くあおった。

「くぅ~…この一杯のために生きてるよな」

…さて。何かツマミはないかな?と、俺が戸棚を漁っていると…。

バンッ!!

突然、大きな音が鳴りドアが開かれたかと思うと、そこには鬼…もとい、アヤがCDデッキを片手に立っていた。

「…何のつもりだ、お前?喧嘩売ってんの?死にたいの?」

うん、いつもの3割増しくらい口が悪い。

「何ニタついてんの?やめろ、その目。××××るぞ」

おっと、3割どころじゃないな。文面に起こしにくいような言葉で俺を罵ってきた。

「まぁまぁ落ち着けって。ほら、一本どうだ?」

俺が缶ビールを勧めるが…

「飲まねぇよ」

と、小さい虫くらいなら、その圧だけで殺せるんじゃないかと思わせるようなメンチを切って断った。

…まぁ、そうだろうな。こいつ下戸だし。分かってて勧めたんだけど。

「………」

目が座ってる。これ以上からかうのは得策じゃないな。

「悪かったよ、機嫌なおせって」

「『悪かったよ』じゃねぇよ。何のつもりだ?って聞いてんの。何のつもりで、アタシの部屋の前でお経流してんだ?って聞いてんの?しかも、深夜に!爆音で!」

「…はっはっは。よく私が犯人だと分かった――」

トスッ!

俺の足元、数センチ手前にナイフが刺さっている。

おや?これは?俺の知る限り、おいそれと地面に刺さっていて良いものではなかったはずだが?

「バカにしてんのか?何だったら、二度とバカに出来ないようにしてやろうか?」

「お、おい。待て、アヤ。落ち着け。これには訳があるんだ。とにかく話を聞いてくれ」

俺は秘密兵器のレアチーズケーキを机の上に置くと、その向かいにある椅子にそっと腰をおろした。

「…で?何だよ、話って」

相変わらず不満そうなオーラは出ているが、取り敢えずはレアチーズケーキに騙されてくれたようだ。

「いや、実は、これなんだけどさ」

と、1枚の紙をアヤに差し出す。

「何?…聖誕祭?」

「そう。ほら、うちの孤児院ってさ、何か神様崇めてるだろ?何てったっけ?忘れたけど、何とかって神様。その神様の生まれた日を記念して、何かイベントをやろうってことらしくってさ」

「ふ~ん…それで?」

「いや、だから。そのイベントで何かガキどもが喜ぶような出し物とかないかなぁって思ってさ。ちょっと知恵貸して欲しいなぁって」

はぁ…。

アヤが頭を抱えて、盛大にため息をついた。

何だ?俺、そんな的外れなこと言ったか?

「色々、ツッコミたいとこだらけなんだけどさ…。まず、その何とかって神様が生まれた日っていつ?この『アナグラ』の中で、ちゃんとした日にちなんて分かんの?」

「それは…分かんないけどさ。うちの孤児院では、ある日を境に、その日を一月一日ってことにして、一年をカウントしてんだよ」

「なるほど。つまり形式上のってことね。それじゃあ、それはまぁ良いとして。…これが最大の疑問なんだけどさ」

と、アヤは一拍おいて大きく息を吸い込み口を開いた。

「人が完っ全に眠り切ってるこんなド深夜に!あんな嫌がらせを駆使してまで、『今』聞かなきゃいけないことなのか、それは!?」

マズイ。また怒りに火が付いた。

「いやいやいや。確かに悪かったとは思ってるけどさ。ああでもしなきゃ、お前起きないだろ?」

そう。アヤは所謂、心霊系が得意じゃない。だから、どうしても寝起きの悪いアヤを起こしたい時は、こういった手に訴えるしかないのだ。…命懸けだけど。

「それに、明日は里帰りの日だしさ。まだ聖誕祭は先だけど、明日孤児院に帰った時、じいちゃん先生に何か良い話聞かせたいんだよ。分かるだろ?」

「だったら、もっと早く相談しろよ。こんな急じゃなくてさ」

ぶつぶつ言いながらも、何か良い案がないか、考えてくれているみたいだ。

こういう時、やっぱりこいつは良い奴だなって思う。…だからこそ…

「なぁ、アヤ」

「ん~…?」

「本当はさ、明日に間に合わせたかったんだけど…間に合わないなら、またで良いから…さ、その、何だ…」

言い淀んでいる俺の顔を、何かを探るような目でアヤが見ている。

「もし良かったら、他の人にも意見聞いといて貰えないかな?例えば…アザミ…とかさ」

ぴくっと眉が動く。

さっきまで、俺の顔を覗き込むようにしていた顔を俯かせ、黙り混んでしまった。

しまった。ちょっと強引だったか?けど…

「あのさ、アヤ。俺は――」

「リュウ。…話はこれで終わり?」

「え?えっと…まぁ…そうだけど…」

「ふ~ん…そう」

アヤは短くそう呟くと席を立った。

「おい、アヤ。あのさ――」

「明日には間に合わないけど…また何か考えとくよ」

こちらを振り返らず、俺が渡した紙をヒラヒラとさせながら、そう呟く。

「そっか…」

「本当、あんたも懲りないね。アタシのことなんて放っておけばいいのにさ。…ごめんね。…ありがと」

パタン。

ドアを閉じ、アヤは部屋へ帰って行った。

表情は見えなかったけど、きっともう怒ってはいないだろう…そんな気がした。

「さて、と」

俺も立ち上がり部屋へ戻る。

明日は里帰りの日だ。早く寝なきゃ。

「あ…」

もしアヤが本当に何か出し物を考えてくれたらどうしよう?

明日、じいちゃん先生に打診しとかなきゃな。「聖誕祭とかやってみないか?」って。

そんなことを考えながら、一つ大きな欠伸をして、ドアを閉めた。


プロフィール

SP@CE

Author:SP@CE
演劇ユニット『SP@CE』

奈良で活動する演劇ユニット。
2012年6月、始動。


2014年5月 第1回公演「CONNECT」無事、終了致しました。
ご来場いただいた皆様、本当にありがとうございました。


2014年5月現在、次回公演に向けて、役者・裏方募集中です!
詳しくは、下記カテゴリ『募集要項』をご覧ください!

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