演劇ユニット『SP@CE』

奈良で活動する演劇ユニット『SP@CE』の劇団員ブログ用ページです。 現在、劇団員(役者、裏方)募集中です!

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「ナツマチ」 another story『meaning of my name』。

case of sora tachibana

『meaning of my name』


*************


雲。

太陽。

鳥。

電線。

洗濯物。

鳥。

紙飛行機…ん?

鳥…2回言ったか?

まぁいいや。鳥可愛いしな。雀とか、燕とかは勿論、鷹や鷲だってよく見ると可愛いんだからな、侮りがたしだ、鳥。

犬や猫やアライグマに比べるとちょっと劣るが、それでもまぁ悪くない。…ペンギンに至っては、限りなくアライグマクラスと言ってしまって差し障りない。

個人的な…飽くまで個人的な好みで言わせてもらえるなら、ダチョウはかなり可愛いと思う。速いし。

そもそもダチョウは……はっ!

しまった。真面目に考え事をしていた筈なのに、気付けば鳥のことばかりを考えていた。

そう。真面目に真面目に。

雲。

太陽。

鳥。

電線。

洗濯物。

紙飛行機。

アヤ。

…アヤ?

「何やってんの、ソラ?」

アヤだ。空にあるものを考えてたらアヤが出てきたぞ。

「アヤは…飛べるのか?」

「はい?」

あ、違った。寝っ転がってるところを、アヤが覗きこんできただけだ。アヤは飛ばない。

「ごめんな。勘違いだった。アヤは飛ばないものな」

「ん?う、うん。そうだね」

起き上がって、アヤの隣に並ぶ。うん、やっぱり飛んでない。

「で?何やってたの?」

「空を見ていた」

「ソラを?…ああ、空か」

二人して空を見上げる。電線や洗濯物はさっきより近くなった。紙飛行機はもう見えないけど、さっきまでは飛んでたんだ。太陽とか、雲とか、鳥とかと同じように…空に。

「何か考え事?」

またじっと空を見上げていると、アヤがそう尋ねてきた。

「うん、考え事…名前のこと」

「名前?」

「そう。名前。名前の由来」

そうなんだ。空を見上げて考えてた…名前の由来。立花ソラ。ソラ…ソラ…空。

「由来…か。なるほど、あんまり考えたことなかったな」

「そうなのか?じゃあ、アヤは自分の名前の由来、知らないのか?」

「ん~…知らないけど、多分、花の名前から取ったんじゃないかな?アヤメだから、菖蒲」

「そっか」

アヤはアヤメだから、菖蒲か。そう言えば、アザミも薊だもんな。周防家は花の名前を付けるのか。

「アヤメな…殺めるから取ったわけじゃないのか…」

「そんな親いないでしょ。子供に何て名前付けてんだよ。辛うじて忍くらいだよ、子供にそんな名前付けるの」

いや、忍も多分付けない。

「冗談だって。怒るなよ、アヤ」

「怒ってはないけど」

「でも、そっか。花の名前な。菖蒲ってどんなだっけ?」

「…綺麗な花だよ。アイリスって呼ばれたりもする。花言葉は、吉報や、希望、情熱…あんまり似合わないかな」

アヤはそう言うと、ははっと笑って、眉をハの字にした。アヤがこういう顔をする時は自分を卑下してる時だ。

「そんなことない。アヤにぴったりだ」

だから、はっきりと言ってやる。アヤはこれくらいはっきり言ってやらないとダメなんだ。すぐに自分のことをバカにする悪い癖がある。

「ソラ…ありがと。…ソラの名前の由来…何なんだろうね?ソウ先生には聞いてみた?」

「ううん。ソウ兄ちゃん知ってるかな?」

「知ってるんじゃない?案外、ソウ先生が付けた名前だったりして」

「そうかな?それじゃあ、今から聞きに行ってくる。ありがとな、アヤ」

「どういたしまして」背中にアヤの声を聞きながら、診察室に向かった。

ガチャ。

診察室のドアを開ける。しかし、残念ながらそこにソウ兄ちゃんの姿はなかった。

あれ?まだ寝てるのかな?部屋に行ってみようかな?と、診察室から出ようとしたところでリュウと鉢合わせた。

「おう、ソラ。どうした?何か急いでるみたいだけど」

急いでるように見える人間に呑気に話しかける辺りがリュウらしい。リュウイズムと言っていいだろう。

「………」

「ん?どうした?俺の顔が何か突いてるか?」

それを言うなら、「俺の顔に何か付いてるか?」だろ。ボケなのか、単なる覚え間違いなのか、微妙なところだ。何せリュウだしな。

う~ん…どうしよう?リュウにも聞いてみようかな?名前の由来。…ついでだし聞いてみるか。

「なぁリュウ。リュウはリュウタだろ?自分の名前の由来とか知ってるか?」

「由来?」

「何だ、由来も知らないのか?由来っていうのはな――」

「いやいや、それくらい知ってっから」

何だ知ってたのか。リュウなら知らない可能性もあるかも、と思ったけど、どうやらそれくらいの知識はあるらしい。

「由来な~。何だろ?多分、じいちゃん先生だよな、俺の名前付けたの。全然気にしたことなかったわ」

「はぁ…これだからリュウは」

「な、何だよ。それじゃあ、お前は知ってんのか?ソラって名前の由来」

「それが分からないから、ソウ兄ちゃんを探してたんだろ」

そうだ。こんなところでリュウなんかに拘ってる場合じゃない。ソウ兄ちゃんを探さなきゃ。

「しっかし、名前の由来か~。俺の場合、リュウタだろ?リュウタ…リュウタ…やっぱり、リュウってことは、竜かな?ドラゴンのように猛々しく育って欲しい、みたいな?」

リュウは調子に乗って、「がぉーっ」みたいなことを言っている。…リュウがドラゴン?…はぁ。それはないな。

「な、何だよ?何で、そんな可哀想な子を見る目で俺のこと見てんだ?」

もし本当にリュウの名前の由来が、ドラゴンの竜なんだとしたら…じいちゃん先生が不憫すぎる。名前負けも甚だしいな。

「…じいちゃん先生に…宜しく伝えて下さい」

ペコッと、会釈とお辞儀の中間くらいの感じで頭を下げる。後方からは何かを訴えかけるような声が聞こえてくるが、気にせずソウ兄ちゃんの部屋へ向かった。

コンコン。

「はぁい」

ドアをノックすると間延びした声が返ってきた。起きてはいるが、まだ眠いのかもしれない。ドアを開けて中に入ると…あれ?ソウ兄ちゃんはお仕事中だった。

「ソウ兄ちゃん、お仕事中か?」

「ん~…あぁ、まぁ、ちょっとな」

いつものよく分からん紙に、よく分からん文字を書いている。たまに、でたらめに書いてるんじゃないかと、思わないでもない。

「今、お話しても大丈夫か?」

「ん?あぁ、大丈夫だ。そんなに急ぎの仕事でもないからな」

そう言うとペンを置き「どうした?」とこっちに向き直ってくれた。

「名前の由来が気になって」

「名前の由来?ソラのか?」

ぶんぶんと首を縦に振ると、「名前の由来な~」と言って、少し考え込んでしまった。この感じからすると、ソウ兄ちゃんが付けたわけじゃなさそうだ。ちょっと残念。

「…ああ、そうだ。思い出した」

「本当か?」

「うん。確か、ソラとユキは母さんが付けたんだよ。ほら、母さんは天体観測が趣味だったろ?だから、空とか、大気とか、宇宙とか、そういう関係の名前が付けたかったんだって聞いたことがある」

「そうなのか…」

「で、ユキは確か、生まれた時に驚くほど肌の色が白かったから、ユキって名前だったんじゃないかな?」

なるほど。確かにユキ姉ちゃんは、ユキっぽさがかなりある。

「ソラは~…そうそう」

と、ソウ兄ちゃんはちょっと笑った。…ん?何で笑う?

「お前には色んな名前の候補があったんだよ。最初は確か…アメだった」

「雨?」

「そう。ユキに対してのアメ。でもな、『お前の名前はアメだ』って親父が抱っこした瞬間、お前が凄まじい勢いで泣き出したんだってさ」

…うん。何か分かる気がする。アメ…悪い名前じゃないけど…何か違う気がする。

「その他にも、太陽からサン、風からフウ、星からヒカリ…色んな名前を付けようとしたらしいんだけど、その度にお前が大泣きするもんだから、相当困ったらしいぞ」

うん、ヒカリとフウはまだしも、太陽からサンはちょっとどうかと思うな。いっそ、雷からライとか。…何だ、ちょっとカッコいいじゃないか。

「女の子につける名前じゃないな」

「心を読まれた気がする!」

「まぁそんな中で付いた名前がソラだったわけだ」

「ソラの時は泣かなかったのか?」

「らしいぞ。色々迷って、最後の候補だった、ソラって名前で呼んだら、お前は嬉しそうに笑ったんだってさ」

ソウ兄ちゃんが遠い目をして言う。

「まるで空で輝くお日様みたいな笑顔だった。母さんも親父も…ユキも俺も。そんなお前の笑顔が大好きなんだよ」

そう言って優しく笑うと、頭をぽんぽんとしてくれた。

そうか…それで『ソラ』なんだ。

「ソウ兄ちゃんは?」

「ん?」

「ソウ兄ちゃんの名前の由来」

ソウ兄ちゃんは、一瞬驚いた顔をして、少し悲しい顔をした。…聞いちゃいけなかったのかな?「やっぱりいいや」そう言う前にソウ兄ちゃんが口を開いた。

「俺は…名前負けだよ、完全に。本当は…『ソウスケ』なんて名前…俺には名乗る資格なんてないんだ」

資格がない?名前負け?一体…

「俺の名前の由来はな――」


**


デネブ。

アルタイル。

ベガ。

三つの星を線で繋いで出来た大きな三角形…夏の大三角。

夏にしか見れない不思議三角。

今、一人で見上げている。

夏に『雪』は降らない。

『総』てのことから『助』けてくれる人はもういない。

ただ…『空』があるだけ。

………。

でも、顔を上げなきゃ。前を向かなきゃ。笑っていなきゃ。

その笑顔を愛してくれた人達の為にも。

そう言い聞かせ、一歩…前へと足を踏み出した。

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「ナツマチ」 another story『my dear』。

case of yuki tachibana

『my dear』


*************


「アヤ、そこのお醤油取って。リュウ、それは砂糖じゃなくてお塩よ」

…う~ん。

「アヤ、ゾウとキリンどっちが好き?リュウ、それはタヌキじゃなくてオオカミよ」

……う~~ん。

「アヤ、今日の晩御飯なに食べたい?リュウ、それはお箸じゃなくてお橋よ」

………。

ダメですね。やっぱり全然しっくりこないです。言葉を崩して喋るのがこんなに落ち着かないものだなんて…。

ソラや兄さんが相手なら平気なのに…何ででしょう?

アヤやリュウにさえ言葉を崩せないのに、他の人になんて…そんなの一生出来る気がしません。

「はぁ…」

思わずため息が出ます。

自分の不器用さにもですが、可愛いげのなさに…。

ソラのように屈託なく、ソラのように無邪気に、ソラのように素直に…周りと接することが出来たら…甘えることが出来たら…そう思わずにはいられません。

あ、ソラというのは私の妹のことです。可愛い妹です。

目の中に入れても痛くない、可愛い可愛い妹です。

兄さんには勿論、私にもとても懐いてくれています。

私もあんな風に…。

可愛い妹にコンプレックスを感じているなんで、我ながら情けない限りです。

兄さんにこんな相談をしても「お前はお前のままでいい。俺はソラもユキも同じくらい大切に思ってる」とか言うんでしょうね。

兄さんは多分、本当に私とソラを区別したりはしていないと思いますから。

妹の私が言うのも何ですが…兄さんにはちょっとシスコンの気がありまして…。本当に私のこともソラと同じように可愛がってくれていると思うんです。

だからこそ、申し訳なくて…。

なんて考えてると、いつまで経っても終わらない。いつまで経っても堂々巡り。

そもそもこんなことを考えているのが良くないんですよね。…分かってはいるんです。でもどうにもならない。心配性は兄さん譲り。今更どうにもなりません。

「はぁ…」

もう一度、少し深めのため息をつくと、目の前から何やら楽しげな女の子が歩いてきます。ソラです。

頭を左右に揺らしながら、何かをぶつぶつと呟いてるようです。何でしょう?

「ソラ、どうしたの?」

「でねばるたいるべら」

…ん?

「ソ、ソラ?」

「でねばゆたいゆべやー」

…な、何でしょう?最愛の妹の口から謎の言葉が…。

「でればすたいむれあー」

こ、怖い。妹の口から妙な呪文が吐き出される様というのは、非現実的な恐怖を感じます。

「ですばすたおるふぇあー」

以前、兄さんに無理矢理見させられた古いホラー映画を思い出します。ソラが「REDRUM」とか言い出したら…あれ?何か最初と言葉が変わってるような…。

「ではあるばいとさまー」

あ、違う。全然違う言葉に変わってますね。

「ソ、ソラ?何?何の呪文なの?」

「でぃーどりっひばすがすばくはつぷれじでん…あれ?ユキ姉ちゃん?どうしたんだ?」

「ごめんね、ソラ。それは100%お姉ちゃんの台詞なの」

あと、途中はどうだか分からないけど、最後のは絶対にわざと間違えてるよね?お姉ちゃん騙されないから。

「でればるたいるべらん、なんだ」

ん?ちょっと最初のっぽくなった気がしますね。もうよく分かりませんけど。じゃあやっぱり途中のもわざと?この子がどこまで本気なのか、姉である私でも把握しきれないです。誰に似たんでしょう…。

「その…で、で、でれ?でね?何とかって言うのは何?」

「ダメだな、ユキ姉ちゃん。でげばるたいずべら、だって」

うん、違う。この子もちゃんと言えてないし、多分、最初の言葉をもう覚えてない。

「その、何とかって言うのは何?呪文なの?新しい遊び?」

「違う違う。これは…あの~…あれだ。その~…」

まさか、自分が何について呟いていたのかも忘れてしまった…のでしょうか?本格的に心配になってきました。

「えっと~…な、な、な~…何ちゃって大錯覚?」

ん?何?もう全然意味が分かりません。

「あ、違う。あれだ、夏の――」

「夏の?」

「…なーーーーっ!!」

突然奇声を発してソラが私から猛烈に距離を取ります。…何でしょう?これくらいの行動なら、とてもソラらしくて今更驚きもしませんが。

「あ、危ない…危うくアレするとこだった。…巧みだな。ユキ姉ちゃんは巧み過ぎるな」

ソラが口の端を上げて、にやりと笑いながら「お前もなかなかやるじゃないか」みたいな顔をしています。

「アレか?誘導尋問なのか?」

「ううん、違う。こういうのを誘導尋問とは言わないのよ」

「そっか」

物分かりが良いのがこの子の長所です。

「詳しくはご説明できないのだが…とにかく、でねばるた…た…何だっけな?またソウ兄ちゃんにちゃんと聞いとかなきゃ」

ソウ兄ちゃん?今、確かにソウ兄ちゃんって言いましたよね?つまり、このソラの奇行の原因は兄さんにあると。

「まぁつまり、そういうアレなんだ」

何がつまりなのかも、そういうアレなのかも、全く分からないのですが…。

「つまり、兄さんに何か聞いたっていうこと?その~…何とかっていうのを」

「………」

「ソラ?」

「忍の一字は衆妙の門だ」

「え?」

「ユキ姉ちゃん…忍の一字は衆妙の門…忍の一字は衆妙の門なんだー!!」

そんなことを叫びながら、ソラは何処かへ走って行ってしまいました。…そして、取り残される私。

何だったんでしょう?『忍の一字は衆妙の門』?つまり、何かを我慢することが大事ということ?知ろうとせず我慢しろ、と?

…しかし、あの子はたまに妙な言葉を知ってますね。

まぁ、発信源が分かっているので、これ以上ソラに聞く必要もないですが。

「やれやれ」

そう一人言ちると、診察室の扉を開け、中に入り、もう一人の親愛なる人に声をかけます。

「兄さん。またソラに変なこと教えた?」


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「ナツマチ」 another story 『the day when snow stopped』。

case of A.suou

『the day when snow stopped』


*************


舗装もろくにされていないような砂利道を軍用ジープで走る。

クッションが悪いのだろう。お世辞にも乗り心地が良いとは言えないが、そんなことにケチを付けるような余裕は、今の軍にはない。

そして、今の私にも…。

空はどんよりと曇っていて今にも雨が降り出しそうだ。

『まるで今の私の心を映し出したようだ』なんて、詩的なことも『アヤ』なら言えたのかもしれない。

曇天を一瞥し、極めて小さな音で舌打ちをすると、ジープを運転している早川伍長がミラー越しにこちらを見て…

「どうかなさいましたか、少佐?」

と、少し緊張した面持ちで訊ねる。

外の景色に目を落としながら、「気にするな」と一言だけ吐き捨てるように呟くと、それ以上追求してくることはなかった。

この辺りの匙加減は慣れたものだ。私の機嫌を損ねない線引きをしっかり理解している。伊達に長年、私の部下をやっているわけではないということか。

しかし、まぁ「雨が降りそうだから機嫌が悪いんだよ」なんて理不尽なことを部下に言うわけにもいかないだろう。

いつからだ?こんなに雨が嫌いになったのは。

…私にもあったんだ…雨降りも悪くないと、そう思っていた頃が。





ぼんやりと窓の外を眺めている。

雨だなぁ…。何だろう?何とも言えず憂鬱な気分になる。

「どうしたんです、アヤ?」

誰かが『アヤ』の名前を呼び、顔を覗き込む。

誰かなんて分かってる。私に…アタシに対して、こんな丁寧な言葉で話しかけるのは彼女しかいない。

「ん~…雨だなぁって思って」

そう言うと、彼女はきょとんとした顔でこちらを見る。

うん。ユキのこういう表情は好きだな。彼女の名前の通り、無垢な新雪のようだ。

「アヤは雨が嫌いですか?」

「ん~…嫌いってわけじゃないけど…何だろうね?何か~…どよんとするよね」

そう言うと、ユキは一拍おいて、くすくすと笑った。何だろう?そんなにおかしなこと言ったかな?

「『どよん』ですか?アヤらしい表現ですね。何となく」

むっ。ユキの中のアタシのイメージってそんなか?『どよん』が、『らしい』って、何かリュウみたいで嫌だな。

「ユキは好きなの?雨」

何かユキ『らしさ』を引っ張り出してやろうと思い、話をふってみる。

「そう…ですね。嫌いじゃないですよ。お洗濯が乾かないのは、ちょっと困りますけど」

何だ。ユキらしいけど、『どよん』とは随分違うな。笑う要素がない。

「でも…そうですね。雨が降ると、ソラがつまらなそうにしてるので、それもちょっと可哀想かなって思います」

「あ~…確かに。外で遊べないもんな。ソラは雨嫌いそうだ」

ソラは快活で元気いっぱい。ユキは大人しくて理知的。…顔はそっくりでも中身は全然違う。

「ユキとソラってさ、見た目はそっくりだけど、中身は全然違うよね?」

「…そうですね。私にも…ソラみたいに可愛いげがあれば良かったんですが」

ん?そういうつもりじゃなかったんだけど…そもそもユキだって十分に可愛いげあるじゃないか。

「いや、ユキだって――」

「しゃべり方とか」

「えっ?」

「しゃべり方とか…変えてみたら良いんでしょうか?ほら。しゃべり方が違うだけでも、随分と印象が変わると思うんです。どうでしょう?」

…どうでしょう?って…思わず少し吹き出してしまう。

「え?え?何です?何で笑うんですか?」

「いやいや、だってさ…」

そんなことで悩んでるなんて、やっぱり十分に可愛いげがあるじゃないか。

「あっ」

そんな言葉を口にする前に、ユキがアタシの後方を見て、小さく声をあげた。

「ん?」

振り返ると、さっきまで覗いていた窓の外に、うっすらと虹がかかっているのが見えた。

「ほら、ね?」

ユキが呟くように話しかける。

「雨の後には虹がかかるんですよ?雨も悪くないでしょう?」


**


…くそ!くそっ!くそっ!!

あの七光りのボンクラ息子め…!

普段はろくに仕事もしないくせに、こんな時だけ余計なことをしやがる!

上官でさえなければ、あの何の役にも立たない頭を、いますぐぶっ飛ばしてやるのに…!

苛々しながら、私は「underground統括支部」の入口前までやってくる。

全身を激しく雨が打ち付けているがそんなことを気にしている場合ではない。

しかし、雨で濡れたせいか、こんな時に限って、指紋認証の読み込みが悪い。更に苛立ちが増していく。

ピッ。

安っぽい機械音が鳴った直後、開きかけた扉に手をかけ、無理矢理にこじ開けると、そこに見慣れた顔があった。早川伍長だ。軍靴を鳴らし敬礼をする彼の儀礼的な挨拶を無視する。

「早川!どういうことだ?説明しろ!」

「す、すいません、少佐。管轄外なのでお引き取り願ったのですが、私の言うことでは…聞いていただけず――」

「権限はこっちにある。こういう時の為に貴様を常駐させてるんだろう。相手が賊でも同じように頭を垂れるのか、お前は?」

彼の胸ぐらを掴み、噛み付くように吐き捨てる。

「も、申し、訳――」

突き飛ばすような強さで掴んでいた手を離す。

…分かってる。伍長を責めるのは酷だ。いくら管轄の違いがあっても、相手は中佐だ。止められるわけがない。…しかし…!

「作戦本部」と記されたドアの前で足を止め、襟元を正しノックをする。

「周防です。失礼します」

ドアを開け、中に入ると、そこにいた男の顔が目に入る。瞬間、眉間に皺が寄るのが分かった。

自分ではポーカーフェイスを自負しているのだが…こうも顔に出るとは…。

「おぉ、周防少佐か。どうした?そんなずぶ濡れで」

…どうした?だと?とぼけやがって…!

奥歯がガチリと噛み合う音が鳴る。今にも掴みかかりそうな気持ちを抑え、奴に…遠藤中佐に用件を伝える。

「…いえ。遠藤中佐が支部に来られ、『立花ユキ』の処分に着手されると、部下から連絡を受けまして」

「それでこの大雨の中、わざわざ戻ってきたのか?律儀なものだな、君も。流石、女だてらに少佐を名乗ってるだけはある。軍人の鑑だ」

と手にしていたワインを飲むと、酒臭い息を吐き、下品な笑いを垂れ流した。…奴の一挙手一投足に苛々する。

「会議の場でも『立花ユキ』の有用性に関してはご説明した筈ですが?今は『立花ソウスケ』の引き抜きのためにも、『立花ユキ』の処分はするべきではない、と。今の軍には――」

喋っている私の声を遮るように、ぽんっと、肩に手が置かれる。

「周防少佐。『アナグラ』の連中に入れ込むのは、あまり賢いやり方ではないな。出世の邪魔になるぞ」

「私は――」

遠藤が、バサッと紙束を机の上に広げる。何かの書類か?一瞬、何のことか理解が出来なかった。…いや、したく…なかったのか…。

「いくら『軍人の鑑』たる君でも、いくらかの情が移るのは仕方ないことだ。…まぁ気にするな。礼はいらんよ。恩に着せるつもりもない。…これからの『君』に期待している」

そう呟くと、遠藤中佐はそのまま部屋から出ていった。

私は震える手で、机に広げられた紙束を集める。そこに記された文字…。

『死亡確認書 氏名 立花ユ…』

目の奥に火が付いたように視界が真っ赤に染まる。激しい雨音がノイズのように耳を衝く。左手に紙束を握りしめる。空いた右手を血が滲むほど強く握り、気づけば私は思い切り壁をなぐりつけ――


**


ガタンっ!

ジープが激しく揺れる。

…そうか。眠ってたのか。

「すいません、大丈夫ですか?少佐」

「あぁ…」

短く返事を返す。

懐かしい夢を見た。私が雨を好きになった時と…雨を大嫌いになった時の夢だ。

窓から外の景色に目をやる。いつの間にか、外は大雨だった。…あの日のように。あの日…ユキがいなくなった日のように…。

「…そうか」

「はい?」

一人呟く私の声に、早川伍長がすっとんきょうな合いの手を挟む。「いや」と返事を返し、私は一人言ちる。…そうか。私が雨を嫌いなのは…そういうことだったんだ。

「…雨は雪を溶かしてしまうからな」

私の声が聞こえたのか、聞こえなかったのか、伍長がその言葉に返事を返すことはなかった。

「少佐。もうすぐA地区の貸倉庫前に着きます。ご準備を」

「あぁ」

ジープのドアを閉め、貸倉庫の扉の前に立つ。

中からは、二人の男が話す声がする。慣れ親しんだ『家族』の声だ。

私はそんな感傷を頭の中から追いやり、スイッチを切り替える。

『家族』ではない、『親愛なるものの仇』へと。


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「ナツマチ」another story 『my treasure』。

case of sousuke tachibana

『my treasure』


*************


黒く空を覆う雨雲から、叩き付けるような雨が降り続けている。

まだ昼過ぎだが、外は薄暗く、日が射す気配は全くない。

こんな時に限って…と思いながら、こんな時だからこそ…という考えも頭をよぎる。

『この大雨なら目撃されにくいのではないか』…と。



多分、このまま数日が経てば、リュウは反宗教団体の兵士を特定し…殺そうとするだろう。

それだけは回避しなければならない。

あんな連中の為に、リュウが手を汚す必要なんてないんだ。

リュウは真っ直ぐで、人の痛みが分かる奴だ。あんな人の形をしたゴミクズどもが相手でもきっと気に病んでしまう。

だから…。

ポケットに入れた手に力を込め、覚悟を決める。

問題は全て事が済んだ後だ。

その時、リュウの居場所が分かっていればいい。…でも、もしその時点でリュウが何処にいるのか分からなかった場合…きっとリュウは軍に疑われることになる。そして、それを俺が守ってやるのも難しくなる。

きっと軍の連中は、確かな証拠なんてなくても、何か適当に理由をつけてリュウを犯人に仕立て上げるだろう。そして、真偽も分からないまま、リュウを処刑するに違いない。

奴等は…理由なんてなくても…平気で人を殺す。…ユキの時のように。

それだけはさせない…2度と奪わせない…2度と壊させない…あんな奴等に!

ポケットから懐中時計を取り出す。

今から始めれば…夜までには…きっと…。

雨粒が懐中時計を濡らし、表面を伝って雫が落ちた。

…それはまるで涙を流しているように見えた。

そうだな。

今頃、アイツは何処かで1人、膝を抱えて泣いているのかもしれない。


**


ああ、くそ。何で俺まで軍の会議なんかに出席しなきゃいけないんだ。

手首をかきむしりながら一人苛々していた。

誤解のないように言っておくが、別に苛ついた時に手首をかきむしる癖があるわけじゃない。

単純に痒いんだ。さっきまで慣れない腕時計なんかをしてたもんだから。

アレルギーってわけでもないんだが…どうにも手や首に何かを巻き付けるのは肌に合わないらしい。

会議の間、数時間つけていただけでこの有り様だ。

しかし、時計をしないわけにもいかないし…だから、そもそも何で俺が軍の会議なんかに――

「ソウ先生?」

ふいに声をかけられ、慌ててかきむしるのをやめる。…別に咎められることでもないし、慌てる必要なんてないんだけどな。

「おお、リュウ。どうした?」

声をかけてきたのはリュウだった。…ん?何だろう?いつもと少し様子が違う…ような?

「?どうした、リュウ?なんかあったのか?」

「へ?いやいやいや、別に何でもないって。それよりソウ先生、会議に行くとか何とか言ってなかったっけ?」

露骨に話を逸らされた気がするが…まぁいいか。

「もう行ってきたよ。下らない。時間の無駄だ、あんなもん。どいつもこいつも上官の顔色見ながら状況報告するだけの集まりだ。それに…」

「それに?」

「…いや、何でもない」

…それに、わざわざ呼び出しておきながら、俺は一人別の部屋で、銃を持った兵士に監視されながら、モニター越しでの会議だった。馬鹿げてる。何の意味があるんだ。

「よく分かんねぇけど、何か大変なんだな」

「あぁ。それくらいの認識でいいよ。で?何だ?俺に何か用があったんじゃないのか?」

「いや、別に用ってほどじゃあ…」

と、じっと何かを見て言う。ん?何だ?俺の…手?足?椅子?

「いや、本当に大したことじゃないんだ。気にしないでくれよ」

きょろきょろする俺を見て、慌てて取り繕うように言うと、そのまま「じゃあな」と言って部屋に戻っていった。

はて?…妙なこと考えてないといいけどな。


―翌日―


俺の予感が当たったかもしれない。

時刻は深夜0時を回ろうとしているが…リュウがまだ帰ってこない。

いつもなら、何処に出掛けていようと、とっくに帰ってきてる時間だ。

…まさかとは思うが…アナグラの外に出てる…なんてことはないだろうな。

頭を抱えていると、玄関の扉がギィッと小さい音を立てた。どうやら、リュウが帰ってきたらしい。足音を立てず、こそこそと入ってくる。

「リュウ」

「のわっ!!!…び、び、び、びっくりした…な、何だよ、ソウ先生。まだ起きてたのか?」

「当たり前だろ。こんな時間になっても帰ってこない奴がいるんだ。おちおち寝てられるか」

ばつの悪そうな顔で「ははっ」と笑うとそのまま部屋へ戻ろうとする。

「おい、リュウ。その、何だ。お前ももう子供じゃないんだし、ちょっとくらいのことでグチグチ言うつもりはないんだけどな。…って、ん?」

よく見ると、顔や腕にアザや擦り傷が出来ている。まさか…ケンカか?

「お前、どうしたんだよ、それ。そんな怪我して…何してたんだ?」

「け、怪我?怪我って…何のことだ?」

そこを惚けるのか?…ったく。

「リュウ。ここ座れ」

「べ、別に大丈夫だってこれくらい」

「いいから座れ」

と、リュウの腕を引っ張りむりやり座らせる。

腕を引いた時、少し顔を歪めたな。やっぱり痛むんじゃないか…。

「何やってたんだ?…って聞いても、きっとお前は答えないんだろうな」

聞いて答えるなら、最初からこそこそしたりしない。

「ご、ごめん。でも、1週間だけだから」

「1週間?」

「そう。1週間。1週間経ったら、ちゃんと説明する。別に何か悪いことしてるわけでもないし…俺を信じて、1週間だけ何も聞かないでくれ。頼む」

と頭を下げる。

…まったく…こんな風に言われたら問い詰めるわけにもいかなくなるだろ。

「…1週間だな?」

「あぁ、ありがとう、ソウ先生」


―1週間後―


今日であれから1週間だ。

あの次の日も、至るところに傷を作って帰ってきた。

ここ2~3日は、目立った怪我はないみたいだけど、やっぱり帰りは遅い。

今日はちゃんと理由を聞く約束だからな。リュウがどんなに隠したがっても絶対に聞き出す。

そんなことを考えていると、「ただいま~!」とリュウの元気な声が聞こえてくる。あれ?今日はちょっと早いな。

「ただいま、ソウ先生」

「おう、おかえり。今日は早かったんだな?」

「まぁな。実質、バイトは昨日で終わりだったから。今日は給料貰って買い物してきただけだし」

と言うと、鞄をガサガサと探り始めた。…バイト?給料?買い物?何の話を――

「ソウ先生。いつもありがとな。これ俺からの誕生日プレゼント」

そう言って、リュウは小さい箱を俺に差し出してきた。

その瞬間、全てのピースがカチリとはまった。…そうか。こいつ、これを買うために毎日遅くまでバイトしてたのか。多分、慣れない力仕事かなんかだろう。それであんな怪我までして…けど、誕生日?

「あ、ありがとう。でも、誕生日って?今日は俺の誕生日なのか?」

『アナグラ』に入ってから日にちの経過がよく分からない。俺の誕生日が今日かどうかなんて、リュウにも分からないはずだけど…。

「孤児院ではさ、ある1日を一月一日に決めて、そっから一年を数えてるんだ。それに従うと、今日がソウ先生の誕生日になるってわけ」

なるほど。そういう理屈か。

「ほらほらほら。そんなことどうでもいいからさ。開けてみてくれよ」

そんなことって…。リュウは一刻も早く自分のあげたプレゼントを見て欲しいらしく、凄い勢いで急かしてきた。

「分かった分かった、今開けるから」

小さな箱から出てきたのは、簡素なデザインの懐中時計だった。…懐中時計って…まさか…。

「前にソウ先生が、手首かゆそうにしてたの見かけてさ。あれって腕時計のせいだろ?これだったら、かゆくならずに済むと思ってな」

へへっと笑ってみせる。

…俺は一言も言ってない。腕時計のせいで手首がかゆくなったなんて…一言も。

それでも、リュウには分かったのか。本当に…こいつは…。

「ありがとう。本当に。一生大事にする。お前のおかげで、また1つ宝物が増えたよ」


**


お前に貰った宝物…少し協力してくれ。

もう1つの宝物…俺の『家族』を守るために。

白衣の裾で濡れた懐中時計を拭うと、そのままポケットにしまう。

今の時間なら直接電話が繋がる筈だ。目の前の公衆電話の受話器を取り、コインを入れる。

3コール後、電話が繋がり、不機嫌そうな男の声が聞こえてくる。可能な限り平静を装いながら、電話先の男にこう告げる。

「『underground』C-16地区所属の立花ソウスケです。…宮部曹長ですか?実は先日の健康診断の結果について、早急にお伝えしたいことが御座いまして、直接お電話差し上げました。出来れば他の方には内密にお会いしたいのですが…」

左手に懐中時計を強く握り言葉を繋げる。

もう少しだけ頑張ろう。

大事なものを守るために。


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オススメ戦争映画 Vol.9 『聖なる嘘つき』。

どうも、猪上です。

オススメ戦争映画、第9段(最終回)は「聖なる嘘つき」です。

1999年、アメリカ。
原題「Jacob the liar」。

監督、ペテ・カソヴィッツ。
主演・製作総指揮、ロビン・ウィリアムズ。

正式な邦題は「聖なる嘘つき―その名はジェイコブ―」でしたが、後に何故か「聖なる嘘つき」になってしまってました。

このブログでは以前から何度か名前の出ていた作品ですね。

はっきり言って、そんなにメジャーな作品ではないと思いますし、一般的にそこまで評価の高い作品でもありません。

猪上がこの作品をオススメするのは、本当に個人的な好みによるところが大きいです。

ロビン・ウィリアムズの出演作品の中でもあまり脚光を浴びるタイプではないですね。

ロビン・ウィリアムズの戦争映画と言えば、殆どの方が「グッドモーニング・ベトナム」を挙げるのではないでしょうか?

まぁそれはそうでしょうね。

「グッドモーニング・ベトナム」と比べると、知名度も評価も興行収入も、雲泥の差ですから。

…雲泥の差は言い過ぎですか。

でも確かに「グッドモーニング・ベトナム」も名作ですよね。

特にロビン・ウィリアムズの良さをより引き出してるのは「グッドモーニング・ベトナム」だと思います。

しかし、今回のオススメは「聖なる嘘つき」です。

まぁそもそも、猪上のメインは第二次世界大戦であって、ベトナム戦争はちょっと違ったりしますしね。

と言うわけで、「聖なる嘘つき」です。

このお話は狭いゲットー内だけのお話が全てです。

以下、あらすじ。

ある日、風に乗り壁を越えて舞い込んできた新聞紙を見つけたジェイコブが、必死にその新聞紙を追い掛けるところからお話は始まります。

追いかけている内に時間は外出時間ギリギリに。

それを監視に見つかり、罰を受けに指令部へ行けと言われ、渋々指令部へ向かうジェイコブ。

その一室でジェイコブは偶然ラジオ放送を耳にします。

「ベザニカまでソ連軍がやってきている」と。

そして、指令部からゲットーに帰ろうとする途中で一人の少女と出会い、彼女を匿うことに。

翌日、同じユダヤ人の仲間がやけになりドイツ軍にケンカをしかけようとします。

そこでジェイコブは彼を助ける為、思わず口にしてしまうのです。

「もうそこまでソ連軍がやってきてる。もうすぐ俺たちは助かるんだ。ラジオで聞いた」と。

その話はみるみる内にゲットー内に広がり、「ジェイコブはラジオを隠し持っている」と噂になるのです。

ジェイコブはゲットーのユダヤ人たちに希望を与えるため、あたかもラジオを持っているかのような嘘をつき続けるのですが…。

…とまぁ、ざっくり書くと、こんなとこです。

本当はもっと詳細に書きたいのですが、出来れば実際に見ていただきたいので、割愛させていただきます。

この映画に対して、色々と批判的な意見も勿論あるわけなんですが…例えば「ギャグがスベり気味」や「オチを期待してしまう」と言った、ロビン・ウィリアムズに対する、コメディの期待。

これはどうかな?と。いや、それは見る側の問題だろ、と。

どう考えても、これはコメディではありませんよ?何故か、たまに「ジャンル:コメディ」ってなってますが、とんでもないです。

ただ要所要所でネタっぽい会話が多かったりするので、そう思ってしまうのかもしれませんが…。

では、何故「要所要所でネタっぽい会話が多い」のか?ですが、これはオープニングのモノローグが全てを語っています。正確ではありませんが、以下のような内容です。

『あるユダヤ人の占い師にヒトラーが尋ねた。「自分はいつ死ぬのか?」と。その占い師はこう答えた。「あなたは我々ユダヤ人の祝日に死ぬでしょう」。ヒトラーは尋ねた。「何故そんなことが分かる?」。占い師は答えた。「あなたの死んだ日が我々の祝日になるからです」と。ヒトラーは尋ねた。「この状況でそんなことを言って、ただで済むと思っているのか?」と。占い師は答える。「我々に残されたのはこれだけです。他は全てドイツ軍に奪われました」』

「ユダヤ人はジョークが好き」と言う話はホロコースト物ではよく聞くことですが、まさにこれにつきます。

特に自虐的なブラックジョークが多く、「ドイツ軍は全部奪っていったが、ジョークまで奪われなくて良かったよ。こいつを奪われてたら、ユダヤ人は即刻根絶やしだ」みたいなブラックジョークを聞いたことがあります。

つまり、そういう皮肉をふんだんに込めた作品だと思うんですね、本作は。冒頭でそれをちゃんと説明されているのに、ネタがどうだこうだと言うのは、申し訳ないですが、ちゃんと作品を見れてないと言わざるを得ないかと。

あと、個人的にとても納得がいかないのが「ライフ・イズ・ビューティフル」と比べられることが多く、更には「聖なる嘘つき」が過小評価されてしまうことです。

いやいや、どう考えてもこちらの方が良作だと思いますよ?

正直、「ライフ・イズ・ビューティフル」は好きになれませんでした。

「ライフ・イズ・ビューティフル」好きな方はごめんなさい。読まない方が良いかもです。

ヒューマンドラマとしてなら良いのかもしれませんが、戦争映画としては如何なもんかと。

あの何でもスルーしてしまう滑稽極まりないドイツ軍や、

子供という生き物をバカにしてるのか?と言いたくなるくらい何でも鵜呑みにしてしまう子供や、

ただ無理矢理付いてきて自らは何もせず、ただただ心配をかけさせてメソメソするだけの奥さんや、

やたらデカイ声で喋るが誰からも一切注意されない主人公と、何故かそれを生暖かく見守るだけの他のユダヤ人たちや、

これから何十年、父親の嘘を疑えなかった自分を責めるだろう子供と、何も出来なかっただけの母親が、父親のいない食卓を囲む日々がやってくるであろう作品につけられた「ライフ・イズ・ビューティフル」という無責任なタイトルや…

それも全部、ユダヤジョークということでしょうか?

それならそれで、やはり猪上にはついていけそうにありません。

最終回なんでかなり好き勝手書いてますねすいません。

…と、まぁ話はそれましたが。

「聖なる嘘つき」の良いところは、ただの臆病でちっぽけなおじさんである主人公が、自分の中にある可能な限りの勇気(←ここ大事です)を奮い立たせるところでもあります。

ゲットー内に、平気な顔で蛮勇を振りかざせる人間がそうボコボコいるはずないんですよ。

子供のためとは言え、そういう人間味のなさが「ライフ・イズ・ビューティフル」を好きになれなかった理由でもあります。

その点、「聖なる嘘つき」は人間味に溢れています。正義感も偽善も欺瞞も猜疑心も。良い感情も悪い感情も様々つまってます。

この映画を見ると、ロビン・ウィリアムズの笑顔の力を思い知ること請け合いです。

そして、ラストシーン。

見て欲しいので、詳しくは書きませんが…これは色々な取り方が出来ますね。

実際には、ちょっと出来すぎてる気もしますが…全くあり得ない話でもないくらいの匙加減。

でも、ここのモノローグを聞く限りでは、そもそもそうではない可能性がありますよね。

そういう考え方もありかな、と思いますが…やはり、此処は素直に見るなら、ジェイコブのなけなしの勇気に対するささやかなご褒美という捉え方が一番綺麗かな?とも思います。

まぁ、 色々と書きましたが…

見て下さい。少しでも興味を持たれたなら、 是非見ていただきたいです。

そして、「ナツマチ」を見に来ていただいた方には、「どの辺りが影響を受けているのだろう?」と探りながら見ていただけたらと思います。



さて。

今回でこのシリーズは最終回です。

如何でしたか?猪上は過去に例を見ない程、楽しい企画でした。

次回からの更新では、「ナツマチ」のショートストーリーを全5話でお届けしたいと思います。

では、そちらもゆるっとご期待下さい。

プロフィール

SP@CE

Author:SP@CE
演劇ユニット『SP@CE』

奈良で活動する演劇ユニット。
2012年6月、始動。


2014年5月 第1回公演「CONNECT」無事、終了致しました。
ご来場いただいた皆様、本当にありがとうございました。


2014年5月現在、次回公演に向けて、役者・裏方募集中です!
詳しくは、下記カテゴリ『募集要項』をご覧ください!

お問い合わせ
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