演劇ユニット『SP@CE』

奈良で活動する演劇ユニット『SP@CE』の劇団員ブログ用ページです。 現在、劇団員(役者、裏方)募集中です!

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「ナツマチ」another story 『my treasure』。

case of sousuke tachibana

『my treasure』


*************


黒く空を覆う雨雲から、叩き付けるような雨が降り続けている。

まだ昼過ぎだが、外は薄暗く、日が射す気配は全くない。

こんな時に限って…と思いながら、こんな時だからこそ…という考えも頭をよぎる。

『この大雨なら目撃されにくいのではないか』…と。



多分、このまま数日が経てば、リュウは反宗教団体の兵士を特定し…殺そうとするだろう。

それだけは回避しなければならない。

あんな連中の為に、リュウが手を汚す必要なんてないんだ。

リュウは真っ直ぐで、人の痛みが分かる奴だ。あんな人の形をしたゴミクズどもが相手でもきっと気に病んでしまう。

だから…。

ポケットに入れた手に力を込め、覚悟を決める。

問題は全て事が済んだ後だ。

その時、リュウの居場所が分かっていればいい。…でも、もしその時点でリュウが何処にいるのか分からなかった場合…きっとリュウは軍に疑われることになる。そして、それを俺が守ってやるのも難しくなる。

きっと軍の連中は、確かな証拠なんてなくても、何か適当に理由をつけてリュウを犯人に仕立て上げるだろう。そして、真偽も分からないまま、リュウを処刑するに違いない。

奴等は…理由なんてなくても…平気で人を殺す。…ユキの時のように。

それだけはさせない…2度と奪わせない…2度と壊させない…あんな奴等に!

ポケットから懐中時計を取り出す。

今から始めれば…夜までには…きっと…。

雨粒が懐中時計を濡らし、表面を伝って雫が落ちた。

…それはまるで涙を流しているように見えた。

そうだな。

今頃、アイツは何処かで1人、膝を抱えて泣いているのかもしれない。


**


ああ、くそ。何で俺まで軍の会議なんかに出席しなきゃいけないんだ。

手首をかきむしりながら一人苛々していた。

誤解のないように言っておくが、別に苛ついた時に手首をかきむしる癖があるわけじゃない。

単純に痒いんだ。さっきまで慣れない腕時計なんかをしてたもんだから。

アレルギーってわけでもないんだが…どうにも手や首に何かを巻き付けるのは肌に合わないらしい。

会議の間、数時間つけていただけでこの有り様だ。

しかし、時計をしないわけにもいかないし…だから、そもそも何で俺が軍の会議なんかに――

「ソウ先生?」

ふいに声をかけられ、慌ててかきむしるのをやめる。…別に咎められることでもないし、慌てる必要なんてないんだけどな。

「おお、リュウ。どうした?」

声をかけてきたのはリュウだった。…ん?何だろう?いつもと少し様子が違う…ような?

「?どうした、リュウ?なんかあったのか?」

「へ?いやいやいや、別に何でもないって。それよりソウ先生、会議に行くとか何とか言ってなかったっけ?」

露骨に話を逸らされた気がするが…まぁいいか。

「もう行ってきたよ。下らない。時間の無駄だ、あんなもん。どいつもこいつも上官の顔色見ながら状況報告するだけの集まりだ。それに…」

「それに?」

「…いや、何でもない」

…それに、わざわざ呼び出しておきながら、俺は一人別の部屋で、銃を持った兵士に監視されながら、モニター越しでの会議だった。馬鹿げてる。何の意味があるんだ。

「よく分かんねぇけど、何か大変なんだな」

「あぁ。それくらいの認識でいいよ。で?何だ?俺に何か用があったんじゃないのか?」

「いや、別に用ってほどじゃあ…」

と、じっと何かを見て言う。ん?何だ?俺の…手?足?椅子?

「いや、本当に大したことじゃないんだ。気にしないでくれよ」

きょろきょろする俺を見て、慌てて取り繕うように言うと、そのまま「じゃあな」と言って部屋に戻っていった。

はて?…妙なこと考えてないといいけどな。


―翌日―


俺の予感が当たったかもしれない。

時刻は深夜0時を回ろうとしているが…リュウがまだ帰ってこない。

いつもなら、何処に出掛けていようと、とっくに帰ってきてる時間だ。

…まさかとは思うが…アナグラの外に出てる…なんてことはないだろうな。

頭を抱えていると、玄関の扉がギィッと小さい音を立てた。どうやら、リュウが帰ってきたらしい。足音を立てず、こそこそと入ってくる。

「リュウ」

「のわっ!!!…び、び、び、びっくりした…な、何だよ、ソウ先生。まだ起きてたのか?」

「当たり前だろ。こんな時間になっても帰ってこない奴がいるんだ。おちおち寝てられるか」

ばつの悪そうな顔で「ははっ」と笑うとそのまま部屋へ戻ろうとする。

「おい、リュウ。その、何だ。お前ももう子供じゃないんだし、ちょっとくらいのことでグチグチ言うつもりはないんだけどな。…って、ん?」

よく見ると、顔や腕にアザや擦り傷が出来ている。まさか…ケンカか?

「お前、どうしたんだよ、それ。そんな怪我して…何してたんだ?」

「け、怪我?怪我って…何のことだ?」

そこを惚けるのか?…ったく。

「リュウ。ここ座れ」

「べ、別に大丈夫だってこれくらい」

「いいから座れ」

と、リュウの腕を引っ張りむりやり座らせる。

腕を引いた時、少し顔を歪めたな。やっぱり痛むんじゃないか…。

「何やってたんだ?…って聞いても、きっとお前は答えないんだろうな」

聞いて答えるなら、最初からこそこそしたりしない。

「ご、ごめん。でも、1週間だけだから」

「1週間?」

「そう。1週間。1週間経ったら、ちゃんと説明する。別に何か悪いことしてるわけでもないし…俺を信じて、1週間だけ何も聞かないでくれ。頼む」

と頭を下げる。

…まったく…こんな風に言われたら問い詰めるわけにもいかなくなるだろ。

「…1週間だな?」

「あぁ、ありがとう、ソウ先生」


―1週間後―


今日であれから1週間だ。

あの次の日も、至るところに傷を作って帰ってきた。

ここ2~3日は、目立った怪我はないみたいだけど、やっぱり帰りは遅い。

今日はちゃんと理由を聞く約束だからな。リュウがどんなに隠したがっても絶対に聞き出す。

そんなことを考えていると、「ただいま~!」とリュウの元気な声が聞こえてくる。あれ?今日はちょっと早いな。

「ただいま、ソウ先生」

「おう、おかえり。今日は早かったんだな?」

「まぁな。実質、バイトは昨日で終わりだったから。今日は給料貰って買い物してきただけだし」

と言うと、鞄をガサガサと探り始めた。…バイト?給料?買い物?何の話を――

「ソウ先生。いつもありがとな。これ俺からの誕生日プレゼント」

そう言って、リュウは小さい箱を俺に差し出してきた。

その瞬間、全てのピースがカチリとはまった。…そうか。こいつ、これを買うために毎日遅くまでバイトしてたのか。多分、慣れない力仕事かなんかだろう。それであんな怪我までして…けど、誕生日?

「あ、ありがとう。でも、誕生日って?今日は俺の誕生日なのか?」

『アナグラ』に入ってから日にちの経過がよく分からない。俺の誕生日が今日かどうかなんて、リュウにも分からないはずだけど…。

「孤児院ではさ、ある1日を一月一日に決めて、そっから一年を数えてるんだ。それに従うと、今日がソウ先生の誕生日になるってわけ」

なるほど。そういう理屈か。

「ほらほらほら。そんなことどうでもいいからさ。開けてみてくれよ」

そんなことって…。リュウは一刻も早く自分のあげたプレゼントを見て欲しいらしく、凄い勢いで急かしてきた。

「分かった分かった、今開けるから」

小さな箱から出てきたのは、簡素なデザインの懐中時計だった。…懐中時計って…まさか…。

「前にソウ先生が、手首かゆそうにしてたの見かけてさ。あれって腕時計のせいだろ?これだったら、かゆくならずに済むと思ってな」

へへっと笑ってみせる。

…俺は一言も言ってない。腕時計のせいで手首がかゆくなったなんて…一言も。

それでも、リュウには分かったのか。本当に…こいつは…。

「ありがとう。本当に。一生大事にする。お前のおかげで、また1つ宝物が増えたよ」


**


お前に貰った宝物…少し協力してくれ。

もう1つの宝物…俺の『家族』を守るために。

白衣の裾で濡れた懐中時計を拭うと、そのままポケットにしまう。

今の時間なら直接電話が繋がる筈だ。目の前の公衆電話の受話器を取り、コインを入れる。

3コール後、電話が繋がり、不機嫌そうな男の声が聞こえてくる。可能な限り平静を装いながら、電話先の男にこう告げる。

「『underground』C-16地区所属の立花ソウスケです。…宮部曹長ですか?実は先日の健康診断の結果について、早急にお伝えしたいことが御座いまして、直接お電話差し上げました。出来れば他の方には内密にお会いしたいのですが…」

左手に懐中時計を強く握り言葉を繋げる。

もう少しだけ頑張ろう。

大事なものを守るために。


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プロフィール

SP@CE

Author:SP@CE
演劇ユニット『SP@CE』

奈良で活動する演劇ユニット。
2012年6月、始動。


2014年5月 第1回公演「CONNECT」無事、終了致しました。
ご来場いただいた皆様、本当にありがとうございました。


2014年5月現在、次回公演に向けて、役者・裏方募集中です!
詳しくは、下記カテゴリ『募集要項』をご覧ください!

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