演劇ユニット『SP@CE』

奈良で活動する演劇ユニット『SP@CE』の劇団員ブログ用ページです。 現在、劇団員(役者、裏方)募集中です!

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「ナツマチ」 another story『my dear』。

case of yuki tachibana

『my dear』


*************


「アヤ、そこのお醤油取って。リュウ、それは砂糖じゃなくてお塩よ」

…う~ん。

「アヤ、ゾウとキリンどっちが好き?リュウ、それはタヌキじゃなくてオオカミよ」

……う~~ん。

「アヤ、今日の晩御飯なに食べたい?リュウ、それはお箸じゃなくてお橋よ」

………。

ダメですね。やっぱり全然しっくりこないです。言葉を崩して喋るのがこんなに落ち着かないものだなんて…。

ソラや兄さんが相手なら平気なのに…何ででしょう?

アヤやリュウにさえ言葉を崩せないのに、他の人になんて…そんなの一生出来る気がしません。

「はぁ…」

思わずため息が出ます。

自分の不器用さにもですが、可愛いげのなさに…。

ソラのように屈託なく、ソラのように無邪気に、ソラのように素直に…周りと接することが出来たら…甘えることが出来たら…そう思わずにはいられません。

あ、ソラというのは私の妹のことです。可愛い妹です。

目の中に入れても痛くない、可愛い可愛い妹です。

兄さんには勿論、私にもとても懐いてくれています。

私もあんな風に…。

可愛い妹にコンプレックスを感じているなんで、我ながら情けない限りです。

兄さんにこんな相談をしても「お前はお前のままでいい。俺はソラもユキも同じくらい大切に思ってる」とか言うんでしょうね。

兄さんは多分、本当に私とソラを区別したりはしていないと思いますから。

妹の私が言うのも何ですが…兄さんにはちょっとシスコンの気がありまして…。本当に私のこともソラと同じように可愛がってくれていると思うんです。

だからこそ、申し訳なくて…。

なんて考えてると、いつまで経っても終わらない。いつまで経っても堂々巡り。

そもそもこんなことを考えているのが良くないんですよね。…分かってはいるんです。でもどうにもならない。心配性は兄さん譲り。今更どうにもなりません。

「はぁ…」

もう一度、少し深めのため息をつくと、目の前から何やら楽しげな女の子が歩いてきます。ソラです。

頭を左右に揺らしながら、何かをぶつぶつと呟いてるようです。何でしょう?

「ソラ、どうしたの?」

「でねばるたいるべら」

…ん?

「ソ、ソラ?」

「でねばゆたいゆべやー」

…な、何でしょう?最愛の妹の口から謎の言葉が…。

「でればすたいむれあー」

こ、怖い。妹の口から妙な呪文が吐き出される様というのは、非現実的な恐怖を感じます。

「ですばすたおるふぇあー」

以前、兄さんに無理矢理見させられた古いホラー映画を思い出します。ソラが「REDRUM」とか言い出したら…あれ?何か最初と言葉が変わってるような…。

「ではあるばいとさまー」

あ、違う。全然違う言葉に変わってますね。

「ソ、ソラ?何?何の呪文なの?」

「でぃーどりっひばすがすばくはつぷれじでん…あれ?ユキ姉ちゃん?どうしたんだ?」

「ごめんね、ソラ。それは100%お姉ちゃんの台詞なの」

あと、途中はどうだか分からないけど、最後のは絶対にわざと間違えてるよね?お姉ちゃん騙されないから。

「でればるたいるべらん、なんだ」

ん?ちょっと最初のっぽくなった気がしますね。もうよく分かりませんけど。じゃあやっぱり途中のもわざと?この子がどこまで本気なのか、姉である私でも把握しきれないです。誰に似たんでしょう…。

「その…で、で、でれ?でね?何とかって言うのは何?」

「ダメだな、ユキ姉ちゃん。でげばるたいずべら、だって」

うん、違う。この子もちゃんと言えてないし、多分、最初の言葉をもう覚えてない。

「その、何とかって言うのは何?呪文なの?新しい遊び?」

「違う違う。これは…あの~…あれだ。その~…」

まさか、自分が何について呟いていたのかも忘れてしまった…のでしょうか?本格的に心配になってきました。

「えっと~…な、な、な~…何ちゃって大錯覚?」

ん?何?もう全然意味が分かりません。

「あ、違う。あれだ、夏の――」

「夏の?」

「…なーーーーっ!!」

突然奇声を発してソラが私から猛烈に距離を取ります。…何でしょう?これくらいの行動なら、とてもソラらしくて今更驚きもしませんが。

「あ、危ない…危うくアレするとこだった。…巧みだな。ユキ姉ちゃんは巧み過ぎるな」

ソラが口の端を上げて、にやりと笑いながら「お前もなかなかやるじゃないか」みたいな顔をしています。

「アレか?誘導尋問なのか?」

「ううん、違う。こういうのを誘導尋問とは言わないのよ」

「そっか」

物分かりが良いのがこの子の長所です。

「詳しくはご説明できないのだが…とにかく、でねばるた…た…何だっけな?またソウ兄ちゃんにちゃんと聞いとかなきゃ」

ソウ兄ちゃん?今、確かにソウ兄ちゃんって言いましたよね?つまり、このソラの奇行の原因は兄さんにあると。

「まぁつまり、そういうアレなんだ」

何がつまりなのかも、そういうアレなのかも、全く分からないのですが…。

「つまり、兄さんに何か聞いたっていうこと?その~…何とかっていうのを」

「………」

「ソラ?」

「忍の一字は衆妙の門だ」

「え?」

「ユキ姉ちゃん…忍の一字は衆妙の門…忍の一字は衆妙の門なんだー!!」

そんなことを叫びながら、ソラは何処かへ走って行ってしまいました。…そして、取り残される私。

何だったんでしょう?『忍の一字は衆妙の門』?つまり、何かを我慢することが大事ということ?知ろうとせず我慢しろ、と?

…しかし、あの子はたまに妙な言葉を知ってますね。

まぁ、発信源が分かっているので、これ以上ソラに聞く必要もないですが。

「やれやれ」

そう一人言ちると、診察室の扉を開け、中に入り、もう一人の親愛なる人に声をかけます。

「兄さん。またソラに変なこと教えた?」


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プロフィール

SP@CE

Author:SP@CE
演劇ユニット『SP@CE』

奈良で活動する演劇ユニット。
2012年6月、始動。


2014年5月 第1回公演「CONNECT」無事、終了致しました。
ご来場いただいた皆様、本当にありがとうございました。


2014年5月現在、次回公演に向けて、役者・裏方募集中です!
詳しくは、下記カテゴリ『募集要項』をご覧ください!

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